「たった一度だけでも、あなたから俺に触れてくれたら、そしたら、もう二度とこんな我儘は言いません。

今日で最後にします。
これ以上、しつこく付きまとったりしません。

諦められるかは、分からないですけど………レイラさんを困らせたり、迷惑かけたりはしないようにします。

だから………一度だけでいいから………」



訴えかけてくる声があまりに切実で、

見つめてくる瞳があまりに苦しげで。


それを見た途端、私の頭の中は、ぼんやりと霞がかったように仄白くなった。



なにも考えられない。


他のことは何もかも私の中から消え去って、

目の前のルイだけが私の心を占める。



眉根を寄せて、まっすぐに私を見つめるルイ。


その瞳には私しか映っていないということが、なぜだかはっきりと分かってしまう。



―――だめだ。


こんなにまっすぐに気持ちをぶつけられて、こんなに一途に想われて、そ知らぬふりができるほど、私は強くない。



「………」



気がつくと、私はルイに向かって手を伸ばしていた。



指先にひやりとした感触を感じて、我にかえる。


自分が何をしているのかに気づいて、驚いた。



つめたい夜気に冷えきったルイの頬に、私の手が触れている。