時間をとるという話はしたものの、今日はルイは7時までのシフトだった。


待たせるのも申し訳ないから、『今日はやめにして、また次の機会にしよう』、と提案したのに、ルイは頑なに認めなかった。



「レイラさん、お疲れさまです」



外に出ると、すぐにルイが駆け寄ってきた。



「ここで待ってたの? 寒かったでしょ、ごめんね」


「気にしないでください。俺が勝手に待ちたかっただけなんですから」


「うん………」



しばし、沈黙が流れる。


ルイがどういうつもりなのか分からなかったので、私もどうすればいいか分からない。



ルイは少し緊張したような面持ちで街路樹をちらりと見て、それから私に視線を戻した。



「あの、レイラさん」


「ん?」


「俺のこと、気持ち悪いとか思ってますか?」


「えっ?」



私は唖然としてルイを見た。


いきなり何を言い出すんだろう?



「………そんなわけないでしょ? どうしたの、急に………何かあった?」


「いえ、何もないです。………俺が触ったものは気味が悪くて触れたくない、とか思いますか?」


「なに言ってんの、思わないよ。当たり前でしょ」


「よかった」



ルイが満面の笑みを浮かべた。


その笑顔に、腹に一物ありそうな印象を感じる。