一人きりの部屋。


いつもと同じのはずなのに、なぜか、ひどく静かで虚しく感じた。



一人になると、私はいつもリヒトのことを考えてしまう。


私と正反対の女の子と、腕を組んで、仲むつまじく歩いていたリヒトの姿。



胸が深くえぐられたような痛みを覚える。



―――どうして?

どうして嘘をついたの?

リヒト………。



私はどうしても、その一点だけが受け入れられなかった。


リヒトが浮気をしても、私は許すことができた。


なぜなら、リヒトが嘘をつかなかったから。

そして、いつも最後には必ず、私のところに帰ってきたから。


リヒトに気まぐれに触れられた女は数えきれないほどいたけれど、長続きした女はいなかった。


―――私以外には。



だって、リヒトの才能を、リヒトの音楽の素晴らしさを、本当に理解している女は、たぶん私だけだから。


だから、リヒトは必ず私のところに戻ってくると、私は信じていられたのだ。



でも、もしかしたら、違うのかもしれない。


リヒトにとって私は『特別』なのだと思っていたけれど、それは私の愚かな勘違いだったのかもしれない。