耳許で、ルイがふっと笑みを洩らすのが聞こえた。



「向かいのホームにから見てたんですけど、レイラさんがいつまで経っても降りてこないから………。

もしかして何かあったのかと思って、心配になって、探しに来たんです」



「………うん」



「なんか俺、まるでストーカーみたいですね。って、似たようなものか」



ルイがくすりと笑う。


私はしゃくりあげながら首を振った。



抱き締めるルイの腕に力がこもった。



でも、痛くも苦しくもない。


ただただ、あたたかくて、やわらかくて、やさしい。



包み込まれる感覚に、涙がさらに溢れてきた。



「………レイラさん、帰りましょう。風邪ひいちゃったら大変ですよ」



「………うん。ありがとう」



ルイが子どもをあやすようにぽんぽん、と私の背中を軽く撫でて、ふっと身体を離す。


急に寒さが身に染みた。



「………さむい」



思わず呟くと、ルイが頷く。



「寒いですね。雪、降ってますから」


「うん」


「初雪ですね」


「うん」



私は涙をぽろぽろこぼしながら、ルイに腕を引かれて歩き出した。



すれちがった人たちがちらちらと振り向いてきたけれど、全然気にならなかった。


それはもしかしたら、ルイの腕が温かかったから……そして、何度も囁きかけてくれていたからからもしれない。



「大丈夫、大丈夫………」



―――と。