「レイラさん」



ルイは何度も私を呼ぶ。


春の木漏れ陽みたいな声で。



私の名前は、こんなに優しい響きをしていただろうか。



そう思った途端、視界がじわりと滲んだ。


涙が浮かんでいるのだと、あとから気がついた。



なんで泣いているんだろう………そう考えた瞬間に、涙が溢れた。



突然泣きじゃくりはじめた私を、ルイは何も言わずに見つめている。



「………なんで、なんで、いるの……?」



私は嗚咽の合間に問いかける。



「なんで、こんなところに、いるの? なんで、こんなときに、いるの?」



………私が弱っているときに限って、どうしていつも、ルイはそこにいるの?



ルイがゆっくりと手を伸ばしてきた。


そのまま、背中に腕を回され、ふわりと抱き締められる。



あたたかい―――。



私は涙に濡れた目をあげる。



冷たい風になびくルイの髪ごしに、どんよりと曇った藍色の空。


小さな雪のかけらがぱらぱらと舞い降りてくる。



いつの間にか、雪が降りはじめていたんだ。



まったく気がつかなかった。