「なにか予定はあるんですか?」



ルイの声に、私は「え?」と首を傾げた。



「クリスマスです。その………彼氏さんと会うとか、約束してるんですか」



私は小さく首を振った。


リヒトとクリスマスの約束をしたことなんて、一度もない。


クリスマスにたまたま呼び出されて会うことはあっても、そこにはいつもと違う特別な意味だと、全くないことは私にも分かっていた。


ふつうの恋人たちのようにデートをしたり、レストランで外食をしたり、プレゼントを渡し合うことなんて、想像すらできない。



そもそも私とリヒトは、部屋以外で会うことさえないのだ。


リヒトは女を連れて街をぶらぶら歩くことになんて、全く興味がない。


そんな時間があったら、部屋でギターを弾いたり、曲を作ったりしていたいのだ。



「じゃあ、レイラさん、クリスマスイブもクリスマスもフリーですか?」


「フリー?」


「予定がないってこと」



それは分からない。


リヒトに呼んでもらえるかもしれないから。



私が答えないので、ルイは諦めたように口をつぐんだ。



駅が見えてくる。



「………じゃあ、ここで」



私は会話を打ち切るように告げた。



どうせ違う電車に乗るのだ。


改札に入る前に別れようと思った。