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「お疲れさまでした」
「うん、おつかれ」
店の片付けを終えると、10時近くになっていた。
喋りながらだったので、いつもより時間がかかってしまった。
ルイと一緒にスタッフルームに行き、ミサトさんに「終わりました」と声をかける。
ミサトさんはかたかたとキーボードを叩きながら「おつかれー、ありがと!」と言った。
「ごめんねー、全然手伝えなくて」
「いえ、そんな。会社の仕事いそがしそうですね」
「もう、ほんと参っちゃう。研修と報告書ばっかりで。ほんとはもっと店に出なきゃいけないんだけどね。バイトの皆に迷惑かけてばっかりだし」
ミサトさんはそう言うけど、社員なのにこんなに店のシフトにしっかり入っているのは、かなり珍しいという。
カナリアの母体である会社は、このあたりでいくつかの飲食店を経営していて、正社員が店長を任されるのだけれど、
どの店も社員は閉店のときに顔を出して売り上げを回収するだけで、あとはアルバイトが回しているという。
社員は基本的には本社でデスクワークをするもの、という風潮なのだ。
そんな中でミサトさんは、ほとんど毎日店に顔を出してくれる。
だから現場のことをよく分かってくれているし、話もしやすいのだ。