「俺、恋愛的な意味で一目惚れすることはないんで。性格とか知らないと………見た目だけでは好きにはなりません。

だって、性格が合わなかったら、本当に一緒にいて楽しいか、分からないでしょ?」



どきりとした。


今までは気にしたこともなかったけど、私がリヒトを好きになったのは、一目惚れだったのかもしれない。


性格も知らずに、見た目だけ………?


ちがう。私は、リヒトの音楽も好きだ。



でも―――リヒトの性格は?


私はリヒトがどんな人間なのか、どんなことを考えているのか、本当に知っているの?



性格も知らずに好きになるのは、本当に恋なの………?




ぼんやりと自分の考えに没頭していたら、ルイが私の顔を覗きこんできた。



「まあ、そのあと結局、働きだしてすぐにレイラさんのこと好きになっちゃったんですけどね」



ぼうっとしていたせいか、すぐに反応ができない。



「………レイラさん? どうかしました?」



ルイが怪訝そうな表情になる。


私はやっと我に返って、「なんでもない」と首を振った。



「えーと………トイレの掃除、してくるね。ルイはシャッターよろしく」



逃げるようにその場を去ってからも、私の頭の中には、さっきのルイの言葉がぐるぐると回っていた。



『性格が合わなかったら、本当に一緒にいて楽しいか、分からないでしょ?』



一緒にいて楽しい―――それが恋?


私はリヒトと一緒にいて、楽しいと思ったことがあっただろうか?