途端に、息苦しいほどの気まずさが戻ってきた。


私は曖昧に微笑んでルイに背を向け、レジカウンターに向かう。



「………レイラさん、何してるんですか?」


「レジ閉めしようと思って」


「今日、ミサトさんいますよ?」



そうだった、と私は手を止めた。


ミサトさんがいるときは、社員で店長である彼女がレジ閉めをするのだ。



「………ごめん、ぼんやりしてた」


「すみません。俺が変なこと言ったせいですよね」



ルイは謝ってから、「うう………」と苦しそうに唸って両手で顔を覆った。



「だめだな、俺………。レイラさんを困らせないようにしようって思ってるのに、どうしても言いたくなっちゃって―――ほんとすみません」


「………ん」


「―――でも、せっかくなんで、言いたいこと言っちゃっていいですか」



私は目を細めてルイのほうを振り返る。



「………意外とちゃっかりしてるね」



呆れたように言ってみせると、ルイが、悪戯の見つかってしまった子どものように、にっと笑った。



「それも、隠してたんです。ちゃっかりしてたら嫌いになりますか?」



私は呆れ返って、小さく噴き出した。



「いいんじゃない? 人間、誰しもちゃっかりしてるものでしょ」



ルイが嬉しそうに相好を崩した。