「カナリアって、その点、すごくオーソドックスなメニューじゃないですか。コーヒー系のドリンクと紅茶とジュースが基本で、あとは軽食」


「そうだね。すごくシンプルだよね。コーヒーも、ブレンドとアイスと、アメリカンとカフェオレ、あとはカプチーノだけだもんね」


「そうそう。昔ながらの純喫茶みたいで、俺は、そういうところがいいなあって。はじめて来た瞬間に、ここだ!って確信したんです」


「あはは、一目惚れみたい」


「ああ、たしかに。一目惚れでした」



ルイは納得したように大きく頷いている。



それがおかしくて、私はまた笑った。


こんなに笑ったのはいつぶりかな、とふいに思った。



「―――ちなみに」



ルイが濡れた手を拭きながら言う。


その手が真っ赤になっているのを見て申し訳なくなり、今度は私がキッチンに入ろう、と思いながら私は相づちをうった。



「俺、その日にもう一回、一目惚れしたんですよ」


「うん………え?」



首をかしげて見上げると、ルイが微笑みながら、でも真剣な目を私に向けていた。



「………レイラさんに、一目惚れしたんです」



胸が音を立てた。


何も返せない。



「これ、冗談じゃありませんよ。本気です」



ルイはやっぱりまっすぐな目で私を見つめる。