「それまで面接したバイト先はね、私の履歴書を見て、どこも同じことを訊いてきたの。『地方の国公立大学を出たのに、なんで東京に来てアルバイト探してるの』って」



当たり前の質問だと思う。


就職も決まっていたことはもちろん伏せていたけど、それにしても、かなり珍しいケースだと自分でも分かっていた。



なぜ上京してフリーター生活をしているのか。


普通に考えれば、なにか問題があると思うのが当然だ。

だから、確かめたかったんだろう。



「でもね、ミサトさんは何も訊かなかったんだ。やる気があってちゃんと仕事してくれるなら、こっちは受け入れ態勢万全よ、って」


「さすがミサトさん! かっこいい」


「ね。だから、ここで働くって決めたの。案の定すごく働きやすくて、はじめて長続きしたバイトだった」



給料は確かに高くはないし、仕事もきついといえばきつい。


でも、リヒトを最優先にする私の自分勝手な働き方を受け入れてくれたこの店には、本当に感謝している。



「ルイは? どうしてこの店でバイトしようと思ったの?」


「ああ、最初はなんとなくっていうか、アルバイトの情報誌見てて、大学の近くだから通いやすいなっていうくらいの理由だったんですけど」


「うん」