「………ごめん。もう、行かなきゃ」



自分の思いをどう表現すればいいか分からなくて、私は腕をつかまれたまま玄関に向かって歩き出した。


ルイもついてくる。



「諦めようと思ってたんです」



唐突にルイが言った。


私は靴をはきながらちらりと目をあげた。



「レイラさんが本当に彼氏さんのことが好きで、彼氏さんもレイラさんを大事にしていて、あなたが幸せなら、俺の出る幕はないから諦めようって」



ルイはそう言いながらスニーカーをはく。


それからまた私を見た。



「でも………諦められません。レイラさんが全然幸せそうに見えないから」



私は眼差しをきつくする。



「どうして? 私は幸せだよ。さっきそう言ったでしょ? 私はリヒトに呼んでもらえるだけで幸せなの」



話を切り上げるように言ったのに、ルイはまた口を開いた。



「うそだ、ちがう。それは幸せなんかじゃない。レイラさんは今、ちっとも幸せじゃないでしょ? あなたたちの関係は、おかしいですよ」


「………なんでルイにそんなことが分かるの?」


「顔を見れば分かります。レイラさんはいつも寂しそうだし、不安げだし、なんて言うか………根なし草みたいって言うか、おぼつかなげな顔をしてます」