リヒトのバンド、Dizzinessという名前は、私がつけたものだ。


"dizzy"

形容詞で、〈めまいがするような〉。

動詞なら、〈めまいを起こさせる〉。


リヒトがバンド名を考えていたとき、この単語を使ったらどうかと提案したら、すぐに採用された。


リヒトと出会ったときのことを思い出して考えついたということは、リヒトには教えていない。



―――リヒトに初めて会ったのは、7年前。


地元の大学に入学した私は、どのサークルに入るか迷った末、音楽好きな父と兄の影響もあって、軽音楽部の新歓コンパに顔を出してみた。


そこで、リヒトに出会ってしまったのだ。


たまたま隣の席に座った。

その姿を見た瞬間、息を呑むほど衝撃を受けたのを覚えている。


こんなにきれいな男の子がいるのか、と驚いた。



男にしては色白で、肌が滑らかで、

生まれつき緩く波うつ髪はつやがあって、

流線型の眉の下にある目は大きく、きれいなアーモンド形をしていて、

びっくりするくらい睫毛が長かった。


額から鼻、唇、顎から首にかけての横顔の輪郭のラインが、流れるようで。


うすい唇はすこし不機嫌そうに尖っていたけど、理想的な形をしていた。



つくりものみたいにきれいだ、と内心感嘆していたら、もちろん周りも同じような感想を持っていた。