「雪くんに、そこまで想ってもらえてる友達が羨ましいな」


あたしがつぶやくと、雪くんはきょとんとして、それからあたしの肩をがしっと組んできた。


「なーに言ってんだよ!なずなも、もう俺の友達だぞ!空腹の俺に食べ物を恵んでくれたんだからな!」


あどけなさの残る笑顔の雪くん。
彼とは今日初めて会ったのに、その笑顔は何でか、どこかで見たことがあるような気がする。


というか、食べ物くれたからって……餌につられてやってくる野良猫みたい。


「あははっ……何それ!」


気づけばあたしは、久しぶりに声をあげて心から笑っていた。


スミレのご機嫌を取るための、顔に貼り付けたような営業スマイルなんかじゃない。


雪くんは、不思議なくらい大きな温かさを持った人だった。


的を得ているけど、突き刺さるような言葉しか言わない椿くんとは、本当に大違いだと思った。