「なずな。友達にも心配かけるから、早く戻った方がいいよ。せめて連絡だけでもして……」


“友達”という単語を耳にした途端、さらに眉間にしわを寄せるあたし。


「友達なんて……いないもん……」


唇を噛み締めながら、ついそんな言葉が漏れ出た。


心から信頼できて、何でも話せて、安心できる、そんな絵に描いたような“友達”なんて、あたしにはいないんだ。


もうたぶん、一生出来ることはないと思う。
中学の時、彩芽に裏切られたあの日から……。



「そんなことないと思うけどなぁ」



優しい声が聞こえてきたと思ったら、次に頭に乗せられた手に、優しく撫でられた。


「何があったかわかんないけど、友達がいないなんてことはないと思うなぁ」


「……わかったようなこと言わないで」


絞り出した声で反論するけど、雪くんは「ははっ!ごめんごめん」と、たいして気にすることなく笑う。