って、あたしは何で椿くんのことなんて思い出してるんだろう。あんなムカつく奴のこと!
きっと、雪くんがサッカーボールを持ってるからだ。サッカー繋がりで、パッと椿くんの顔があたまに浮かんでしまったんだ。
可哀想なんて、そんな浅はかな哀れみの言葉をかけられるぐらいなら、バカとか自己中だとか、そういう悪口を言われる方がまだマシだったような気がする。
「……なずな?」
「あ……ごめん。何でもない」
俯くあたしにさすがの雪くんも気づいたのか、心配そうに顔を覗き込んできた。
「なずな。学校をサボってこんなとこにいるのは、学校で何かあったからか?」
あたしを指さして「制服着てるから休みなわけじゃないよな」と言ってくるあたり、意外と鋭いところもあるんだなと感心してしまった。
「……」
心配してくれているからと言って、話せるわけもないし、今日初めて会った人間に話したくもない。