盗み聞きなんて趣味じゃないし、悪いとも思ったけど、なんとなく彩芽の返答が引っかかった。
あたしは、ドアにかけていた手をおろし、代わりに耳をそばだてる。
すると、驚きの言葉を蘭が口にした。
「彩芽ちゃん、前に言ってたよね?
なずなちゃんのこと、嫌いだって」
……え?
前に言っていた?彩芽が?あたしのことを嫌いだって?
「そうだよね?言ってたよね?」
混乱する頭の中で、蘭に対する彩芽の声が悲しく響いた。
「……うん。嫌い」
そのあとのことは、あまりよく覚えていない。
ただ、どうしようもなく悲しくて、つらくて。
トイレに駆け込んで独りで泣いていたことだけは覚えてる。