いつもおとなしくて、おっとりしていて、少しオドオドしていているところもあって。
こんなふうに声を張り上げることなんて、今まで一度もなかったのに。
「す、スミレ……」
「えっ、あ、ごめん……私……」
ハッと我に返ったみたいに、いつも通りの控えめな雰囲気に戻るスミレ。
初めて見たスミレの意外な一面に、あたしは自分で感じている以上に驚いているらしく、なんて声をかければいいかわからない。
そのまま、気まずい沈黙が包むかと思いきや、それを破ったのはこの場に似合わない明るい芹香の声だった。
「あっ!なずながわかんないところ、私もわかんなくて今からスミレに教わろうとしてたところだ!」
「えっ……」
芹香が、あたしのノートを覗き込む。
「なずな、一緒にやろーう!スミレ、ふたりまとめてよろしくお願いします!」
「せ、芹香ちゃん……」