「なずな、おはよう」
「おはよ」
押しどけられたことにも気づいていないのか、芹香がのんきに挨拶してくるものだから、あたしは仕方なく答えておいてあげた。
あんまりあからさまに無視するわけにはいかない。スミレにあたしの悪い印象を与えるだけだ。
なんて思って挨拶だけは返したけど、あとはどうでもいい。
押しどけた芹香をさらに追いやって、あたしはスミレにニコニコと話しかける。
「ねぇ!最近ね、あそこの駅近にカフェができてね、すごく可愛いお店だから今度行こう!」
「う、うん……」
スミレは、あたしの行動に少し、いやだいぶ、驚いている様子。
でも構わない。あたしは、芹香に負けるわけにはいけないんだ。
「いつ行く?」
「なずなちゃん、えっと、ごめんね、今ちょっと芹香ちゃんに課題教えてて……あとで……」
だから、芹香にスミレは渡さないってば。