スミレの席に、芹香がノートとシャープペンシルを手にして駆け寄り、泣きついている。
今日はたぶん自分が当たる日だから、とか何とか言って、頭の良いスミレに課題の答えを教わる芹香。
すごく良く知ってる光景。
だから、ふつふつと沸き上がる怒り。
あの芹香のポジションは、いつもあたしだった。
スミレに勉強を教わるのはあたしなの。
スミレに「しょうがないな」と呆れられるのも。
そのあとのお礼にジュースを奢るのも。
全部、あたしなの!
芹香にはダメ。だって、先にスミレと“友達”になったのはあたしなのよ。
後から来たくせに、図々しいったらないわ。
「スミレ!」
「あ、なずなちゃん、おはよ……」
あたしは、勉強を教わろうとしていた芹香を押しどけるようにして割って入り、スミレに笑顔を向ける。