とにかく、今は早く教室に戻らないと、スミレが来てしまう。うかうかしてたら、また芹香に取られ兼ねない。
早く……早く落ち着け……!
トイレというあまり空気は良くない場所だけど、必死で心を落ち着かせようと深呼吸を繰り返す。
何十分かそうしていると、次第にトイレの外が騒がしくなり始めてきた。
たぶん、登校してくる生徒が増えてきたんだ。
やばい。そろそろ本当に戻らないと。
スミレがもう来ているかもしれない。
仮にスミレがまだだったとしても、さすがに、この時間なら誰かしら教室に来ているはず。
きっと、椿くんと二人きりになるようなことはないだろう。
ある程度気持ちが落ち着いてきたところで、あたしは足早に教室へと戻った。
そこで、トイレにこもっていたことを後悔する。
「スミレ!ここ教えて〜!」
「もう、しょうがないなぁ」
そんな会話の主は、スミレと……芹香。