「彩芽ちゃんさー、なずなちゃんのことなんて、ほっときなって言ったじゃん」


教室のドアに手をかけた時、中から蘭のトゲのある声が聞こえて、動きを止めた。


さっき、彩芽があたしのことを呼んだのを、蘭は見ていたんだ。


すごく、面白くなさそうにしているのが声のトーンでわかる。


「何で、そんなになずなちゃんのこと気にかけるの?」


それは、彩芽が優しいから。


あたしとの付き合いも長いし、仲良しだったし。


あたしは蘭の問いに対して心の中でこう答えたけど、実際に質問された彩芽は違った。


「……ごめん、なさい」


どうしてかはわからないけど、蘭に謝っていた。


“ごめんなさい”?
それってどういう意味で言ってるの?


それって、なんだか、あたしと仲良くするのが悪いみたいに聞こえる。