「勝手に見ないで欲しいんだけど」
「違っ……バッグ落としちゃって……」
「ふーん」
ふーんって、あんたがバッグのチャックを開けっ放しにしてたのが悪いんでしょ!?
イラッとしたけどこれ以上話すことも嫌なので、あたしはどかっと自分の席に座って携帯をいじり始めた。
椿くんも席に座り、暑そうに下敷きで顔をあおぎ、運動でもしてきたのかと思うぐらいの汗をタオルで拭っている。
まさか、誰か来るまでこの嫌な奴と二人きりなの……!?
気まずい、というか嫌なんですけど!
特に話すこともないので沈黙が流れる中、下敷きの独特な音がぴたりと止まった。
「てか、春風さんさー。何でこんな朝早く来てんの」
沈黙を破ったのは、相変わらず気持ちの読めないワントーンな椿くんの声だった。
「……別に」
「染色さん、待ってんでしょ?」