やばい。椿くんが帰ってくる前に直しておかないと、また何か嫌なことを言われてしまうかもしれない。
慌てて机を戻し、バッグの中身を拾い上げる。
教科書、ノート、筆箱、タオル、生徒手帳。
そこまで拾い上げた時、あたしの手は止まった。
床に落ちた一枚の長方形の紙。
それは、思い出の一瞬を切り取って残しておける物……写真だ。
「これ……椿くん……?」
そこに写っていたのは、今よりまだまだあどけなさの残る椿くんらしき男の子。サッカーボールを持って、無邪気に微笑んでいる。
そして、その隣にはもう一人、笑顔でピースしている男の子が……。
「……何してんの」
誰もいなかったはずの教室に冷めた声が響いて、手元からパッと写真が消えた。
後ろを振り返ると、そこには明らかに不機嫌そうな顔をしている椿くんがいた。