そうじゃなかった。別に痛くなんてない。
だから、少し戸惑ってしまったけど、芹香があたしが手を振り払った理由をそう考えたのかな。
そっか……。だったら、好都合じゃん。
「そうだよー。急に掴まれて、すごい痛かったんだからー」
あたしは、わざと怒ったように口を尖らせて言ってやった。
芹香の勘違いと心からの謝罪を、あたしは利用することにした。
スミレの前で、芹香の好感度を下げられるかもしれないと思ったから。
こんな小さなことで、スミレの芹香に対する見る目が変わるとはさすがに思わないけど、ちょっとでも芹香の嫌な面を見せられればとりあえずそれでいい。
「ほんとごめんなさい!私、昔から力の加減ができないって怒られることが多くてさ〜」
「ほんとに痛かったんだから、気をつけてよね〜!あたしだったから良かったものの、スミレはか弱いんだから」
スミレを気遣うフリも忘れなかった。