芹香があたしのもとまで来て腕を引っ張り、「ほら」と教室の中へ招き入れようとする。
馴れ馴れしく触ってこないでよ……!
――パシッ!
あたしはとっさに、自分の腕を掴んでいた芹香の細い手を振り払った。
「あ……」
「……なずな?」
そんなことするつもりはなかったのに、思わずとってしまった行動に、自分でも驚く。
でも、当たり前だけど、それ以上に芹香が目を丸くしている。
「あ、あの……」
どうしよう。あからさまだったよね。
スミレにも、変なふうに思われたかもしれない。
うまい言い訳が見つからず、口ごもっていると……。
「ごめんね、なずな!いきなり引っ張っちゃって!痛かったんだよね!?」
芹香が慌てた様子で、両手を合わせて、ぎゅっと目をつぶりながら謝ってきた。
「え……」