「あ、なずなー!おはよー!」
スミレじゃない人物からの挨拶が、スミレの席からやってきた。
「……芹香」
その人物の名前を、ぽつりとつぶやくことしかできない。
「なずなちゃん、おはよう」
そのあと、スミレが笑顔で声をかけてくれたけど、返すことができなかった。
スミレは、学校に登校してきてから、あたしが来るまでの間の時間は、いつも大好きな本を読んで過ごしていた。
今は、大ファンだという作家の新作を読んでいるとかなんとか。
それなのに、今日は本なんか読んでいなくて。
代わりに、傍らに芹香がいた。
あたしよりも先に芹香が来ていて、さっきまでずっとスミレと話していたのだと理解するのに、そう時間はかからなかった。
「なずなちゃん?」
返事がないあたしを、不思議そうな目で見てくるスミレ。
「どうしたの?朝からぼーっとしちゃって」