「なずなちゃん、待って!お願い、話を聞いて……!」
すがるように彩芽が言ってきたけど、それを無視する。
プレイヤーのボリュームを限界まで大きくして、彩芽の声なんて一切聞こえなくさせて、あたしは足早に歩いていった。
明日は、もっと早く家を出よう。
もう二度と、会いたくない。
心の中に重い鉛が入ったような気分のまま、のろのろと学校へ向かった。
これから1日が始まるというのに、なんだかもう疲れてしまった。
でも、こんなところでへばっていたら、あっという間に芹香にスミレを取られてしまう。
気合いを入れ直し、教室のドアを開けた。
「スミレー!おは……」
いつものように、読書をしているスミレのもとに駆け寄るはずだった。
いつものように、朝から元気だね、なんてスミレに微笑んでもらうはずだった。