髪を切り、少し染めてもいたから、後ろからじゃ全然気が付かなかった。


でも、間違いない、あたしがまだ“純粋な友達”だと信じて疑わなかった相手の彩芽だ。


家が近い方なのはわかってたけど、今までまったく会わなかったから、まさかこんなところで偶然再会するなんて思いもしなかった。


「あの、なずなちゃんっ!私……」


もう一度名前を呼ばれて、そこで初めて自分の足が止まっていたことに気付く。


「人違いだよ。あたしは、あんたのことなんて知らないから」


そんな焦ったような必死そうな顔をして、彩芽が何を言いかけたのかわからない。


だけど、彩芽も蘭も、あたしにとってもう関わりたくない人間なんだ。


『彩芽ちゃん、前に言ってたよね?
なずなちゃんが嫌いだって』


『……うん。嫌い』


あたしは、たぶん一生あの言葉を忘れない。