「……芹香」
あたしの“答え”を聞いて、スミレと八潮さんの顔がパッと明るくなる。
「あたしのことも呼び捨てでいいよ、芹香」
「うん!よろしくね、なずな!スミレ!」
人懐っこい笑顔を浮かべた八潮さん……じゃなくて、芹香。
スミレも安堵と喜びが混じったような柔らかい表情をしていた。
一方、あたしの心には一点の曇りが現れる。
芹香なんて親しく呼びたくない。なずななんて馴れ馴れしく呼んで欲しくない。
あたしとスミレの間に、1ミリたりとも入ってきて欲しくない。
その気持ちは変わらない。
蘭にされたみたいに、仲良くなりすぎてまんまとスミレを取られるわけにはいかないんだ。
でも、かといって、芹香を敵視するあまりスミレに嫌われたんじゃ、元も子もない。
どっちにしろ同じ結果になり得るのなら、程よい距離感で芹香に接しておいたほいたほうが、スミレと長く“友達”でいられる気がした。