そのあと、彩芽と離れていた間の時間を埋めるみたいに、今までのお互いの出来事を話し合った。
あたしが、この前スミレと芹香とケーキ屋さんに行ったという話をしたら、「今度私も行きたい」なんて彩芽が言って。それに対し、あたしも笑顔で「もちろん」と答える。
他愛のない会話だけど、“友達”がいることが、こんなにも幸せなことなんだと改めて知った瞬間だった。
「なずなちゃん、私、もうそろそろ帰らなきゃ……」
門限の厳しい彩芽が、名残惜しそうに言いながら立ち上がる。
もう夕陽が沈み、辺りは暗くなってきていた。
「あたしは……」
彩芽と仲直りできたことが嬉しくて忘れそうになっていたけど、あたしがここに来た本来の目的は椿くんと会うことだった。
部活の時間も終わり、最終下校時間も過ぎているはずだけど、椿くんは来ていない。
もう、来ないのかもしれない。
それでも……。
「あたしは、まだここにいるよ。待ってる人がいるから」