「彩芽。あたし、彩芽があたしを傷つけたとの同じぐらい、彩芽自身も傷ついていたことに気付かなかった」


蘭に掴まれて乱れた制服を整え、彩芽の手を握り、あたしはまっすぐに彩芽と向き合って続ける。


「ごめんね、彩芽。あの時、彩芽は本気であたしに謝ってくれてたのに、信じられないなんて言って、突き放しちゃって」


言い訳になってしまうけど、彩芽に謝られた時、あたしはスミレと喧嘩をしたばかりで、自分の事でいっぱいいっぱいだった。


だから、彩芽のことを何も考えてあげられなくて。そんな余裕なんて少しもなくて。


あたしが追い討ちをかけるように、彩芽を傷つけてしまった。



「本当に……ごめんなさい……」



彩芽は、中学の時も今も、ずっとあたしの“友達”でいようとしてくれていたんだよね。


あたしが頭を下げると、あたしが握る彩芽の手に、震えながらも力が込められる。


「なずなちゃん……なずなちゃん……!」


言葉が出てこないのか、しきりにあたしの名前ばかりを口にする彩芽。
それと同時に、「もういいよ」とでも言ってくれてるみたいに、首をぶんぶんと振る。