彩芽……。


彩芽が、あたしに謝ってきた時のことを思い出す。


あの時は、今更そんなことを言われても、あたしが傷つけられた事実は消えなくて、何も受け入れられなかった。


それでも、あたしに拒絶されたあとも、彩芽はずっとそんなふうに思って、後悔してきたんだ……。


「なずな……?ああ、中学の時の。あの時みたいに、彩芽は黙って私の言うことを聞いてればいいのよ」


「い、嫌!」


首を振った彩芽。蘭のこめかみに明らかに血管が浮き上がる。


「は……?」


「い、いくら蘭ちゃんの命令でも、もう嘘でも友達のことを嫌いだなんて言いたくない!大好きな友達のことを、傷つけるなんてできない、したくない、もう嫌なの……!」


ポロポロと泣きながら、でもまっすぐに蘭を見て、立ち向かう彩芽。


中学の時の、蘭にされるがままだった彩芽はもうどこにもいなかった。