「あ、なずなちゃん」


八潮さんの視線の先を追うようにして、スミレがやっとあたしのほうを振り向いてくれた。


「スミレ……」


「あ……えっと……」


ほっときなと言われていたことを思い出してか、スミレは少し気まずそうに口ごもる。


「芹香ちゃんね、消しゴム忘れちゃったみたいで、それでね……」


スミレが声をかけて、それを機に仲良くなったってことか……。


スミレは苦笑しているけど、仲良くなれて嬉しいという気持ちがにじみ出ているような気がした。


むかつく……そんな楽しそうな顔しちゃって。


「えっと、春風さん……だよね?」


イラつくあたしにさらに追い討ちをかけるかのごとく、八潮さんが、スミレの隣で微笑みながらあたしに挨拶をしてきた。


「私のことは芹香でいいよ。よかったら仲良くしてくれると嬉しいな」