俯いてしまったあたしに顔を上げさせるかのように、両手がさらにぎゅっと強く握られた。
「それでも、どんだけ拒絶されても、全部伝えるんだよ。なずなの気持ち全部。椿くんの力になりたいってこと、雪って子とサッカーしてるところを見たいこととか、椿くんのことが大好きだってことも!」
芹香の言葉に、スミレが続く。
「私もそう思う。目は口ほどに物を言うとかよく言うけど、それって長年連れ添った相手だとわかるかもしれないけど、まだ出会って1年も経ってない相手ではさすがに伝わらないし、誤解も生まれやすいと思うんだ。そうならないために、人には口があって言葉っていうのが出来たんじゃないかな」
そうだ。あたし達も、バラバラだったのに今こうして友達でいられてるのは、あの時自分の気持ちを正直に伝えたからだ。
彩芽もそう。彩芽と話をしなかったら、彩芽はあたしのことが嫌いだったんだってずっと誤解したままだった。
「……生き物って、必要がないものは退化していくから、本当に話すことが必要ないなら口なんてもうなくなってるよね」
すごく納得したあたしは、ぽつりとそんなことをつぶやいた。