スミレは当然あたしじゃなくて、“そっち”の方に顔を向ける。
あたしにも気づいてもらおうと、もう一度名前を呼ぼうとした時、スミレの口から驚きの言葉が飛び出した。
「あ、芹香ちゃん」
え……?
“芹香”って、今日うちの学校に転入してきたばかりの八潮さんのこと……?
何で?さっきまで八潮さんって呼んでなかったっけ?
心に靄がかかっていく感覚。
目の前のスミレには、“芹香ちゃん”が駆け寄ってきて、何やら親しげに話している。だけど、会話の内容なんて入ってこない。
はてなマークがぐるぐるとあたしの頭の中を駆け巡っていて。
まさか、あたしがここに来るまでの間に仲良くなったの?ほっときなって言ったのに?
しばらく呆然としていると、八潮さんがあたしに気づいて微笑みかけてきたのを見て、やっと我に返った。