「幻……?」
屋上には椿くんの姿どころか、さっきまで人が居たような気配が全くない。
あたしが見てたのはただの幻だったんだとわかり、ストンとその場に座り込んだ。
“あたしに出来ることがないんだったら、もういいじゃん。”
“今のあたしには、スミレと芹香っていう、大事な“友達”がいる。”
“椿くんや雪くんがどうなろうと、あたしには関係のないことだし。”
喉が熱くなって、胸が苦しくなって、視界が揺れて何も映らなくなる。
「……っ関係なくなんか……ないよ……っ!」
何がしょうがないだ、何が十分頑張ったと思うだ。
確かにあたしには、スミレも芹香もいて、それだけで良くて、椿くんや雪くんがどうなろうと気にする必要はないのかもしれない。
でも、そんな屁理屈も何もかもどうでも良くなるぐらい。
初めてここで見た時と同じ椿くんの幻を見てしまうぐらい。
あたしは椿くんのことが好きなんだ。