椿くんがあたしにしてくれた分のどれほどを返せるかわからないけど、それでも椿くんの力になりたくて。


確かにそう思って、あたしは今日ここに来て雪くんと話した。


それだけはわかってほしい。


なのに……。



「信じられるわけないだろ。人間は裏切るんだって、春風さん、他でもない君が言ったんだ」



あたしの思いは、椿くんの拒絶の言葉で跳ねのけられてしまった……。


スミレと芹香のことで、あたしを助けてくれた優しい椿くんの目がここにはない。


光がなくて、この世の全てが信じられないとでも言いたげな……暗い闇だけを宿した、悲しい目。



「雪も春風さんも、もう二度と俺に近づかないで」



椿くんはそう残して、行ってしまった。


「……なずな、俺のせいでごめんな」


「……」


ううん、雪くんのせいじゃない。


椿くんをここまで連れてきてしまったのは、他でもないあたしなんだから。
雪くんはただ、あたしに好意を抱いてくれただけなんだから。


誤解をまねくような軽率な行動を取ってしまったのは、あたしだ。悪いのは、全部あたし。