「あのね、椿くん。雪くんはそんなつもりじゃなくて、黙って引越したことだってちゃんと謝ろうと……」
「……」
必死で弁解するあたしを、じっと見つめる椿くん。
「春風さん、雪の味方をするんだね。春風さんなら裏切られた側の俺の気持ちわかってくれると思ってたのに、ちょっとびっくり」
「そ、そんなつもりじゃ……」
固まって何も言えなくなるあたしの代わりに、雪くんが少し怒っているような口調で反論した。
「さっきから違うって言ってんだろ!なずなは本当に俺たちのこと考えてくれてただけだ!さっきのは俺がなずなのことを好きになって勝手に抱きしめただけで、なずなは何も悪くない!」
雪くんが、椿くんからあたしを守るみたいに立ちはだかって、庇ってくれる。
でも、これってなんだか、椿くんだけが悪者になってるみたい。
椿くんは何も、悪くなんかないのに。
このままじゃダメだ。あたしのせいで、椿くんと雪くんが、完全に決別してしまう。
雪くんの背中から出て、椿くんの前に立ったあたしは、虚ろな椿くんの目をしっかりと見て言う。
「ごめんなさい、椿くん。でも本当に誤解なの。あたしと雪くんはそんな関係じゃないし、雪くんだって椿くんに謝りたいってずっと思ってたんだよ」