「春風さんが山茶花と会ってくるなんて言うからついてきたら……まさかこんなことになってたとは」


「……!」


椿くん、今日の朝、あたしが雪くんに会うことを宣言したあの時、本当はまだ起きてたんだ。


「びっくりしたよー。本当に山茶花と春風さんが何か話してると思ったら、こんな公共の場で。結構大胆だったんだな、雪」


「椿……」


「雪とそういう関係だったんなら、俺に告られてもそりゃあ答えられないよね。困らせてごめんね、春風さん」


少し笑っているような口ぶりだけど、抑揚のない椿くんの声。


たぶん、あたし達が何を話してたのかは知らないまま、この場面を目撃してしまったんだ。


「違うの!椿くん、これは……」


「何が違うの?見たままじゃないの?雪が俺の前から勝手に居なくなったどころか、俺の好きな子まで奪ったってことでしょ」


「……っ、椿くん……」


違う……違うのに……。
椿くんの目が、前よりも怖いものになっていて、言葉が喉につっかえて出てこなくなる。


どうしよう、何か言わなきゃ……。早く誤解を解かなきゃ……。


あたしのせいで、椿くんの中の雪くんがどんどん悪い人になっていっちゃう。