雪くんのその強い思いは、きっと椿くんに届くと信じている。


その言葉を聞いて、彩芽もそうだったらいいなって、あたしは確かに思ったから。


「まだそう思ってるのなら、椿くんにちゃんと話してあげて……!」


裏切られるってね、すごくつらいことんだよ。


嘘だったとはいえ、彩芽に嫌いだと言われてしまったあたしはあの時、心にぽっかりと穴があいたような気分で。


きっと、椿くんも今、その穴が埋まらなくて苦しんでる。
笑っていても、サッカーをしてても、きっと雪くんのことを忘れたことなんて一度もない。


椿くんの心の穴を埋められるのは、雪くんしかいないんだよ。


雪くんのことなんてどうでもいい、あたしがいればそれでいい。
あんな苦しくて悲しい嘘を、もうつかなくて済むように、雪くんが救ってあげて。


「……まだ間に合うかな」


いつもは自信満々なのに、今日ばかりは不安そうに眉を下げる雪くん。


だから、あたしは笑顔で背中を押した。