雪くんはきっと、引越しの話を聞いたら、椿くんも自分と同じようになってしまうと思ったんだ。明るい未来の夢の話も、ただの悲しい話になってしまう。


雪くんはそれが嫌で……。
ただ、最後まで椿くんと純粋に笑っていたかっただけなんだ。


雪くんの気持ちはよくわかる。でも、自分だけ引越しのことを知らされていなかった椿くんは、親友だと思っていたのは自分だけかもしれないと、傷ついた。


それはまぎれもない事実。


相手を思いやった優しさが、結果相手を傷つけてしまうこともある。どうすることが正しかったかなんてあたしにはわからないけど、ひとつだけ言える。


心の奥深いところで繋がってる2人が、こんな悲しいすれ違いをしてていいわけがない。


「雪くん。椿くんに、ちゃんと話して」


「え……」


「雪くん、前に言ってたよね。ただ謝りたい、相手がどう思っていようと自分はずっと“友達”だと思ってるって」