あたしの言葉に、雪くんの動きが止まる。
「……え?」
予想もしていなかったのか、いつもニコニコ笑顔を絶やさない雪くんが、珍しく動揺しているのがわかった。
「雪くん。山茶花雪くんっていうんでしょ。それで、雪くんが昔裏切っちゃった親友は……椿冬都くん」
目を丸くしたまま固まる雪くん。
焦点の合わない目であたしをしばらく見つめたあと、観念したのかうなだれた。
「何で……なずなが知ってんの……」
「あたし、椿くんと同じクラスなの。それで……小学校卒業と同時に姿を消した親友がいたって話を聞いた」
「そっか……椿と一緒の学校だったんだね……」
雪くんの口から出た“椿”という名前。
呼ぶのも久しぶりなのか、かすかに震えているように聞こえた。
「そうだよ。俺が山茶花……山茶花雪だ。椿とは小1の時からの大親友だった。でも、それを壊したのは俺だ」