「あたしは独りで行くから」
彩芽にそう言って、あたしは先に教室を出る。
体育館に行くだけだというのに、必ず群れて行動する人間。特に女子。その理由は、独りぼっちだと“可哀想”に見られてしまうから。
“友達”っていうのは、どんなことでも話し合えて、お互いのことが大好きで、喧嘩もするけどそれでもすぐに仲直りできるような、そういう存在。ただ、群れる為だけのものじゃない。
確かに彩芽には許せない部分があるけど、それでもあたしは彩芽を“友達”だと思っていたし、彩芽もそうだと思っていた。
だから、あたしは今、独りぼっちでも大丈夫なの。
「なずなちゃん……」
「いいじゃん彩芽ちゃん。なずなちゃんのことはほっとこ」
蘭の少し勝ち誇ったような、笑いをこらえきれないような声。
そうは思っていても、こんな様子の蘭に腹が立つのは事実。
苛立ちを必死で抑えこみながら、あたしは日々を過ごしていた。