椿くんの名前とか住所が書いてある宛名側を先に見たあたしは、その手紙をゆっくりとひっくり返していく。
封筒の裏の隅の、差出人が誰なのか、勝手にいけないとわかりつつも、どうしても確かめたいと思ってしまった。
ごめん、椿くん……!
目を瞑り、心の中で精一杯謝ってから……。
サッとひっくり返して、あたしはパッと目を開けた。
「……!?」
差出人の名前を見たあたしは、“やっぱり”という気持ちと“どういうこと?”という気持ちが両方現れた。
というのも、差出人の名前が、
【山茶花 雪】
と記されていたから。
差出人はやっぱり、椿くんの親友の“山茶花”くん。
今までその下の名前は聞かされてなかったけど、あたしは“雪”という名前の男子を知っている。
公園でたまに会う、気さくな性格の彼の名前は確か……“雪”くんだった。
いや、“山茶花”はともかく、“雪”という名前はそう珍しくない。
でも、そういえば、あたしは雪くんの苗字を聞かされてない。
もし、雪くんの上の名前が“山茶花”なら……。
雪くんが前に話してくれた、“裏切ってしまった友達”というのは……。
ガラリと教室のドアが開いて、またタイミング良く、今考えていた人物が入ってきた。
雪くんの言っていた“友達”は、
もしかして……椿くん……?