嫌いなんかじゃない。だって、椿くんがいなかったら、今のあたしはここにいない。
でも、今は付き合うとかそんな話をしてるんじゃなくて……。
あたしが答えられずに戸惑っていると、椿くんが小さくため息をついて口を開いた。
「本当に山茶花のことはどうでもいいんだ。学校に友達はいるから、俺はそれで十分だし。強いて言えば、隣に春風さんが居てほしいと思うぐらいだよ」
……どうしてだろう。
椿くんに好きだって言ってもらえて、隣に居てほしいとまで言われて。
ここまで言ってもらえたら、普通は嬉しいはずなのに。
心に響いてこない……。
「……一緒に夢を追いかけたほど大切な人だったはずなのに、どうして、そんなふうに言えるの……」
好きだって言ってもらえたのは、すごく嬉しいことだと思う。でも、素直に心にしみてこなくて、喜べないのは椿くんのせいだ。
親友を切り捨てる言葉と共に、告白なんてしてほしくなかった。
「あたし……そんな、つまんない嘘つく椿くんは……嫌いっ!」
それだけ言い残して、あたしは公園を逃げるように立ち去った。
あたしの“嫌い”の本当の意味を、椿くんならわかってくれるはずだから……。