「あれ?噂をすればなんとやら……」
足を止め、またもや芹香が、そんなよくわからないことを言い出した。
今度は何かと思いながら視線の先を追うと、あたしは驚愕。スミレも、頬を赤く染めながら「あら……!」と声を漏らす。
「つ、椿くん……!」
なんと偶然、サッカーボールを手にした椿くんと、バッタリ遭遇。
「おお、春風さん。それに染色さんに八潮さんも」
あんな話をしていたせいで、あたしは反射的に顔が熱くなるけど、椿くんは相変わらずドライな反応だ。
「ちょうどいいじゃん!私達とのことを報告するがてら、2人で話していきなよ!」
「ええっ!?」
あたしの耳元では、芹香がそんなことを囁いてくる。
「そんな……ちょっと……」
「じゃあ、私達はここで!またね、なずなー!」
芹香は、よっぽどあたしと椿くんをくっつけたいらしい。そんなんじゃないって言ってるのに……まったく強引すぎる。あとで覚えてなさいよ。
何も言わず助けもしないで、手を振って帰っていったスミレも、芹香と同罪なんだから!