「あのさ」


びくりと肩が跳ね上がり、あたしの足は止まってしまった。


また、呼び止められるなんて……。
スミレのことを言われるんだろうか。


だけど、椿くんの口から出てきた一言は、あたしの予想の斜め上をいく、あまりにも意外すぎるものだった。



「俺、あんたのこと、嫌いだわ」



……は?


一瞬頭が真っ白になった。


いきなり嫌いって言われる意味も、わざわざ直接言ってきた意味も、それに対する返事も、何もかもがわからない。


「嫌い。春風さんみたいな人間が」


黙ったままのあたしに、椿くんはもう一度同じ言葉を放つ。


確かに、人間合う合わない、好き嫌いはあるわけで。だから、“嫌い”という言葉に対しては何とも思わない。あたしも、椿くんみたいな人は得意ではないと思うから。