「そろそろ寝よっか。明日も学校だし」


〈そうだね〉


別れを告げて電話を切ろうとした、その時。


――コツン。


部屋の窓に何かが当たるような、変な音が聞こえた。


「い、今変な音が……!」


〈音?〉


こんな夜中に何なんだろう。
深夜ということだけで、無駄に恐怖心を煽る。


とりあえずカーテンを開けて、外を覗いてみた。


そして、あたしは言葉を失った。


2階にあるあたしの部屋の窓に向かって小石を投げながら、あたしを必死で呼んでいるように見えるその姿。


それは……紛れもなくスミレだった……。


〈なずな?〉


耳に当てていたスマートフォンを落としてしまいそうになったけど、芹香の声でハッと我に返る。


「スミレ……スミレが居るよ、芹香……」


かろうじてそう返しながら、あたしは慌てて窓を開ける。
それに気づいたスミレが、今度はぴょんぴょんと跳ねた。