「八潮さんとはちゃんと話せたの?」
「うん。もう芹香も、あたしの大事な“友達”だよ」
あたしが笑って言うと、椿くんも少しだけホッとしたように微笑んだ。
「でも、染色さんとはまだ……ってとこか」
「あはは……。ていうか、授業遅れちゃうよ。早く行こうよっ」
話をそらすように教科書を準備し始めるあたし。
「春風さん」
そんなあたしの手を、椿くんが遮るように掴んできた。
「……!」
ドキッと心臓が波打つ。
椿くんは、真っ直ぐな目であたしを見据えている。その視線にとらわれてしまって、逃れられそうにない。
しばらくあたしの手を掴んだまま黙っていた椿くんだったが、意を決したように口を開いた。
「春風さん。
俺……もう一度サッカーやることにした」